このような時代だからこそ、保守主義の原則が重要になる?

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今回は、「保守主義の原則」について解説したいと思います。

保守主義の原則とは何か?

中小企業の経営者であるあなたは、「保守主義の原則」って聞いたことがあるでしょうか?

保守主義の原則?

保守主義の原則というのは、『企業会計原則』の一般原則六において「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。」と規定されている原則のことです。

例えば、将来発生する可能性が高い特定の損失に備えて引当金を計上する場合を考えてみましょう。

引当金を計上するかどうかの判断そのものについては、

  1. 将来の特定の費用又は損失であること
  2. その費用又は損失が当期以前の事象に起因して発生すること
  3. その費用又は損失の発生の可能性が高いこと
  4. その費用又は損失の金額を合理的に見積ることができること

という要件を満たすかどうかで決定されますが、どれ位の金額を引当金として計上するかの判断については、保守主義の原則の要請に従うことになります。

つまり、引当金として計上すべき金額の算定額に一定の幅があるような場合、中央値の金額ではなく、最も高い金額を引当金の額として選択することが、保守主義の原則に適うというわけです。

保守主義の原則の説明図

但し、『企業会計原則』の注解4において「企業会計は、予測される将来の危険に備えて慎重な判断に基づく会計処理を行わなければならないが、過度に保守的な会計処理を行うことにより、企業の財政状態及び経営成績の真実な報告をゆがめてはならない。」と規定されており、予測される金額よりも高い金額を引当金の額として計上するようなことは認められていません。

又、保守主義の原則は、「真実性の原則」を支える一般原則の一つとして位置づけられますから、適正な利益を計算するために必要なものだと解釈するべきです。

保守主義の原則や保守的な会計処理の背後には……

そもそも企業会計では、上述した「保守主義の原則」以外にも、保守的な会計処理*が至る所に組み込まれています。

*ここでいう保守的な会計処理を保守主義の原則の適用例だと主張する説も存在します。

例えば、費用については発生主義により認識・測定するのに対し、収益については実現主義収益認識基準により認識・測定することで、未実現利益(=貨幣性資産による裏付けのない利益のこと)の計上を阻止したり、先ほどの引当金の計上や減損会計のように、高い確率で将来生じると見込まれる費用や損失を早めに認識・測定することで、結果として利益を控えめに計上し、資金の社外流出を防いだりしています。

保守主義の原則の解釈には様々な説が存在します!

保守主義の原則や保守的な会計処理の背後には、企業に対して慎重な会計処理や判断を求めることにより、企業活動を出来るだけ継続できるようにした方が社会にとっても望ましいという考え方があります。

実際、倒産するような企業の多くは粉飾をしていたり、費用や損失の発生見積りが甘かったりするケースが多く、逆に、普段から慎重な会計判断をしているような企業の場合には、景気が急速に悪化しても長く持ちこたえられるようなケースが多いと思います。

そうだとすると、保守主義の原則や保守的な会計処理の企業会計における今日の役割はとても重要になっているといえるのではないでしょうか?

次回は、「資本の欠損」についてお話ししたいと思います。

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