赤字が続くと資本の欠損の状態にはなりますが……

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今回は、「資本の欠損」について解説したいと思います。

資本の欠損とは何か?

中小企業の経営者であるあなたは、「資本の欠損(自己資本の毀損と呼ばれることもあります!)」がどういうものなのか、正しく理解できているでしょうか?

資本の欠損とは?

資本の欠損とは、純資産の総額が資本金と法定準備金(資本準備金+利益準備金)の合計額を下回っている状態のことですが、前に赤字と債務超過の関係?赤字が続くとどうなるのか?などで説明した「債務超過」に至る前段階の状態をイメージすれば分かりやすいでしょう。

ちなみに、損益計算書で赤字(当期純損失)が生じた場合、貸借対照表では利益剰余金が減少し、純資産の総額が少なくなるという形で影響が現れます。

ですから、赤字が長く続いたり、巨額な赤字が生じたりすると、利益剰余金の残高がマイナスとなり、やがては純資産の総額が資本金と法定準備金(資本準備金+利益準備金)の合計額を下回り、資本の欠損と呼ばれる状態になります。

そして、このような状態になっても業績が改善せず、赤字がまだまだ続くようだと、最後には純資産の総額がマイナス(資産の総額<負債の総額)となり、債務超過と呼ばれる状態になるのです。

但し、債務超過になったからといって、債務超過であることを直接的な理由として倒産するわけではなく、銀行から融資を受けられなくなったり、取引先が取引に応じてくれなくなったりすることで、資金繰りや取引を継続することが難しくなり、やがては倒産へと追い込まれることになります。

資本の欠損のイメージ

ただ資本の欠損の状態にあるというだけでは……

このように、資本の欠損の状態は赤字が長く続いたり、巨額な赤字が生じたりすることで生じるわけですが、債務超過の場合と違い、ただ資本の欠損の状態にあるというだけでは、単純に危険な状態だと決めつけることはできません。

例えば、多額の棚卸資産や固定資産などが不要なビジネスモデルで事業を営んでいる企業があるとして、この企業が資本の欠損の状態にあるとしても、資産のほとんどが現金預金であり、負債のほとんどが長期借入金であるような場合だと、当面は資金繰りに困ることはないでしょうから、事業活動を継続することに大きな支障はないはずです。

(もちろん、その後も業績が改善しないようなら、現金預金はどんどん減り、やがては事業活動を継続することが難しくはなるでしょうが……)

資産および負債の内容やそれらのバランスなどを見なければ適切な判断はできません!

それに、資本金制度の存在理由とその限界(中小企業経営者のための会社法入門!その5)でも説明しているように、現在の会社法において、資本金や法定準備金(資本準備金+利益準備金)の額というのは、出資の払戻しを禁止する際に意味を持つのであって、会社成立後や増資をした後に会社財産を維持するための基準としては十分に機能していません。

(仮に、会社債権者を保護するために、資本金などを会社成立後や増資をした後も会社財産を維持するための基準としては機能させたいのであれば、出資や増資の際に金融機関に預け入れた資金をずっと引き出せないようにする必要があります!)

そのため、たとえ資本の欠損が生じていなかったとしても、資産のほとんどが容易に換金できない資産であり、負債のほとんどが短期借入金であるような場合なら、かなり資金繰りに窮しているはずですから、そのままでは倒産するリスクが高いということになるでしょう。

次回は、「真実性の原則」についてお話ししたいと思います。

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