とりあえず再建計画を作成させるというだけでは……

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今回は、「コロナ禍支援策の功罪」について考えてみたいと思います。

2022年は倒産件数も休廃業や解散した企業数も増加していますが……

東京商工リサーチが2023年1月13日に公表した「年間全国企業倒産状況」や2023年1月16日に公表した『2022年「休廃業・解散企業」動向調査』を見ると、2022年は倒産件数も休廃業や解散した企業数も2021年と比べて大幅に増加しています。(ちなみに、2021年の倒産件数と休廃業や解散した企業数は、実質無利子・無担保融資の「ゼロゼロ融資」などの効果によって2020年よりも減少していました。)

倒産件数と休廃業・解散企業数の推移

休廃業や解散した企業数が増加しているのは、経営支援の名のもとに事業の継続を半ば強制するよりも……コロナ禍でゾンビ企業が……等でも述べてきたように、将来の見通しが立たないために、ギリギリまで頑張って倒産させてしまうよりも、余力がある内に自主廃業を選択した方が賢明だと判断し、前倒しで休廃業や解散をした企業がコロナ禍や原材料費や燃料費の上昇の影響で相当数いたからだと考えられます。

一方、倒産件数が増加しているのは、再建の可能性に賭けてギリギリまで頑張った結果、もはや自主廃業を選択することができなくなった企業が相当数いたからだと考えられますが、これらの企業の内の多くはコロナ禍や原材料費や燃料費の上昇の影響を受ける前から既に問題を抱えていた(ゾンビ企業ゾンビ企業予備軍だった)のではないかと疑っています。

そうだとすると、(何も対策を講じないとすれば……)これから倒産件数は、コロナ禍や原材料費や燃料費の上昇の影響を受けて更に増加していく可能性があります。

問題を先送りしているだけで根本的な解決に繋がらない危険が……

日本政府も倒産件数の増加を懸念しているのか、既に「ゼロゼロ融資」の借換保証などの支援を始めています。

「ゼロゼロ融資」の借換保証などの支援が始まっています!

これらの支援では、金融機関の協力のもと、事業再構築などの前向きな取り組みに対応する(=融資をする)ことも述べられてはいるのですが、これまでの金融機関の対応から考えると、かなり高い確率で成功することが見込まれるような案件でなければ支援を受けることは難しいでしょう。

そのため、以前、コロナ禍でゾンビ企業が……でも述べたように、とりあえず支援を求める企業に再建計画を作成させ、コストカットを要請することで実質的に返済を猶予するという内容の救済方法が主流になると予想されますが、この方法は問題を先送りしているだけで根本的な解決に繋がらない危険があります。

しかも、冒頭で説明した2021年と2022年の倒産件数の推移が示唆しているように、返済を猶予する程度では倒産を回避させることが難しいと考えられるので、今後も何かしらの救済措置を続けなければならず、もしそうなれば、本来なら市場から退場させなければいけないような企業まで延命させてしまう可能性が高いのです。

もちろん、コロナ禍が終息しつつある現在であっても、コロナ禍が経済活動に与えた影響は無視できるものではなく、又、原材料費や燃料費の高騰という新たな問題が浮上している状態では、国レベルでの支援が必要であることも理解できます。

しかし、いつまでも支援を続けていくことはできないのですから、そろそろ日本企業に新陳代謝を加速させるための政策を本気で考えるべき時が来ているのはないでしょうか?

一時的な問題と捉えるのか?それとも、恒久的な問題と捉えるのか?

次回は、「物価変動が会計に与える影響」についてお話ししたいと思います。

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