会社分割による方法で第三者への承継を行うなら……(中小企業経営者のための事業承継!その21)

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今回は、「第三者への承継(その7)」についてお話ししたいと思います。

会社分割とは何か?

ここまで、第三者への承継をする方法として、「株式の譲渡」による方法、「事業譲渡」による方法、「株式交換」による方法、「吸収合併」による方法を説明してきましたが、今回は「会社分割」による方法について説明したいと思います。

会社分割による方法……

会社分割とは組織再編手法の一つであり、会社が事業の全部あるいは一部を分割して、他の会社に承継させる手法のことですが、分割する会社(分割会社)の事業を既存の会社(承継会社)が引き継ぐ「吸収分割」と、新設の会社(設立会社)が引き継ぐ「新設分割」の2種類の方法があります。

尚、対価として与える株式等の交付先について、旧商法では、分割する会社が交付先である「分社型分割(物的分割)」と、分割する会社の株主が交付先である「分割型分割(人的分割)」の2種類が認められていましたが、分割型分割は分社型分割に剰余金の配当を組み合わせたものに過ぎないという見解から、会社法では、分社型分割のみが規定されています。(但し、現在も分割型分割を行うことは実質的に可能です。)

吸収分社型分割のイメージ図と吸収分割型分割のイメージ図

会社分割による方法と事業譲渡による方法の共通点と相違点!

一部の事業だけを譲渡の対象にできるという点で、会社分割による方法と事業譲渡による方法は共通しますが、承継されなかった事業については、現在の経営者がそのまま経営を続けるか、現在の経営者がリタイアしたいのであれば、残った事業を承継したいという別の後継者を探すか、関係者の了解を得て残った事業を廃業する必要があります。

一方、事業譲渡による方法が取引法上の行為であるのに対し、会社分割による方法は組織法上の行為であることから、両者には主に以下のような違いが生じます。

まず、承継方法について、事業譲渡による方法は取引法上の行為なので、承継内容に応じて個別に契約する必要があり、それぞれの契約ごとに承継させなければならないのに対し、会社分割による方法は組織法上の行為なので、個別に契約する必要はなく、分割する事業ごとに包括的に承継させることが可能になります。

許認可の引継ぎなどでも違いがあります!

次に、債権者保護手続きについて、事業譲渡による方法は取引法上の行為なので、譲渡には債権者の同意が個別に必要であり、債権者保護手続きは不要となるのに対し、会社分割による方法は組織法上の行為なので、事業単位で債権や債務は包括的に承継されることになり、債権者保護手続きが必要になります。

最後に、従業員の承継について、事業譲渡による方法は取引法上の行為なので、承継には従業員の同意が個別に必要であるのに対し、会社分割による方法は組織法上の行為なので、そのままだと従業員を保護することが難しくなるため、労働契約承継法に基づく手続きを行う必要があります。

又、会社分割による方法は組織再編手法の一つであることから、組織再編税制という枠組みの中で課税関係が処理されることになり、税制適格要件を満たすのかどうかで課税額も変わってくることになるので、最新の税法を調べた上で税制適格要件がどうなっているのかチェックしておくことをお勧めします。

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