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今回は、「減価償却(その2)」について考えてみたいと思います。
わが国では「確定決算主義」という考え方を採用しているので……
前回の会計と税務、それぞれの立場から適切な耐用年数を考えてみると……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その4)では、会計においては経済的耐用年数を用いて減価償却を行うことが望ましく、税務においては法定耐用年数を用いて減価償却を行わなければならないと述べました。
![経済的耐用年数≠法定耐用年数であることが前提です。](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=521x10000:format=png/path/sd175ba47308b7fa8/image/icd3f69b1d2b2070d/version/1677574250/%E7%B5%8C%E6%B8%88%E7%9A%84%E8%80%90%E7%94%A8%E5%B9%B4%E6%95%B0-%E6%B3%95%E5%AE%9A%E8%80%90%E7%94%A8%E5%B9%B4%E6%95%B0%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E5%89%8D%E6%8F%90%E3%81%A7%E3%81%99.png)
そのため、中小企業の経営者であるあなたは、「会計においては経済的耐用年数を用いて減価償却を行うことが望ましいとしても、税務においては法定耐用年数を用いなければならないのだから、結局、法定耐用年数を選択するしかないのでは?」と思われたかもしれません。
しかし、法人税申告書を作成する際に調整する手間が省けるということは……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その2)でも説明したように、わが国では「確定決算主義」という考え方を採用しているので、会計においては経済的耐用年数を用いて減価償却を行い、税務においては法定耐用年数を用いて減価償却を行うことが可能です。
ちなみに、公認会計士や監査法人の会計監査を受けている上場企業や大会社などは、原則として、決算書を作成する際には経済的耐用年数を用いて減価償却を行い、その後、法人税額を算定する際には法定耐用年数を用いて計算を行い、その差額を法人税申告書で調整するという方法を採用しています。
![本来あるべき姿](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=519x10000:format=png/path/sd175ba47308b7fa8/image/ieaef57558a6da547/version/1677573972/%E6%9C%AC%E6%9D%A5%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%B9%E3%81%8D%E5%A7%BF.png)
「税務会計」を採用する場合……
決算書を作成する際に法定耐用年数を用いて減価償却を行えば、その後、法人税額を算定する際に調整が不要になるので、法人税申告書を作成する際の手続きが簡便になります。
それに、法人税額を算定する際に調整が不要になるということは、有税処理(=税務上は損金として認められなくても、会計上は費用として処理すること)をしないことにもなるので、税金の額は変わらないのに決算書における利益の額は少なくなるという経営者にとっては“うれしくない”事態を回避することもできます。
けれども、経済的耐用年数を用いて減価償却を行っていないために、そのまま決算書を経営判断に利用してしまうと、経営状態を正しく把握できないことから致命的な判断ミスを犯してしまう危険が高まります。
そこで、有税処理を避けつつ、致命的な判断ミスを回避するための方法として、企業外部に提出する決算書は法定耐用年数を用いて作成し、企業内部で経営判断に利用する決算書は経済的耐用年数を用いて作成するという方法が考えられます。
つまり、企業外部に提出する決算書は「税務会計」によって作成し、企業内部で経営判断に利用するためだけの決算書を「管理会計」の範疇で別に作成するのです。
![税務会計を採用する場合の次善策](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=576x10000:format=png/path/sd175ba47308b7fa8/image/ifdad0e62cbb185fa/version/1677573834/%E7%A8%8E%E5%8B%99%E4%BC%9A%E8%A8%88%E3%82%92%E6%8E%A1%E7%94%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E5%A0%B4%E5%90%88%E3%81%AE%E6%AC%A1%E5%96%84%E7%AD%96.png)
こうすれば、企業外部に提出するための決算書と企業内部で利用するための決算書をそれぞれ作成するための手間はかかりますが、それぞれの決算書を用途に応じて使い分けることで、有税処理を避けつつ、致命的な判断ミスを回避できる可能性が高まります。
次回は、「減価償却(その3)」について解説したいと思います。
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