税務会計によって作成された決算書で経営判断するということは……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その3)

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今回は、「税務会計のデメリット」について考えてみたいと思います。

利益と所得はそれぞれ異なるものなので……

中小企業の経営者であるあなたは、(税引前)利益に法人税の税率を乗じることで法人税額を算定すると思っていないでしょうか?

思っていませんか?

実は、法人税額の算定は、利益ではなく所得に法人税の税率を乗じることで行われます。

もちろん、利益と所得が同じようなものなら、どちらであっても別に構わないのですが、前回の法人税申告書を作成する際に調整する手間が省けるということは……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その2)でも説明したように、利益と所得はそれぞれ異なるものなので、これらを混同してしまうことは、あなたが思う以上に危険なことなのです。

尚、利益を算定する際には、企業の経営状態を把握し、これを利害関係者に報告するという会計本来の目的を達成するために、客観性は担保しつつも、できるだけ報告を行う企業が置かれている環境を考慮し、それらを反映できるように配慮する必要があります。

一方、所得を算定する際には、「税収の確保」や「課税の公平」という税制の目的を達成するために、企業側の都合によって所得の額が変化しないよう、できるだけ課税される企業の裁量の余地をなくし、画一的な処理が行われるように配慮する必要があります。

「利益<所得」となることが多いです!

利益と所得を混同しているつもりはなかったとしても……

前回の法人税申告書を作成する際に調整する手間が省けるということは……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その2)では、「税務会計」を行う場合には、「一時差異(=会計と税務では認識や計上のタイミングが違うことから生じるのこと)」について、あらかじめ税法の要請に適った形で会計処理をするので、法人税申告書を作成する際に調整が不要になることを説明しました。

これはつまり、「税務会計」によった場合には、「一時差異」に相当する部分について、事前に税法の要請に適った会計処理を行うことで、法人税申告書の作成時における利益を所得に調整する手間を省いているのですから、利益を算定しているつもりであっても、実質的には所得を算定していることを意味します。

利益を算定しているのか?それとも、所得を算定しているのか?

そうだとすると、「税務会計」によって作成された決算書を使って経営判断するということは、(自分にその気はなかったとしても……)利益と所得が混在している情報に基づいて企業の経営状態を把握しようとしていることになるはずです。

当然のことですが、このような利益と所得が混在している情報に基づいて企業の経営状態を把握しようとすれば、誤った経営判断をしてしまう可能性は高くなります。

このように、「税務会計」は、税務会計によって作成された決算書を使ってしまうことで……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その1)でも説明したように、法人税申告書を効率的に作成できるというメリットはあるものの、企業の経営状態を正しく把握することにはあまり向いていないと考えられるのです……

次回は、「減価償却(その1)」について解説したいと思います。

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