負ののれんが生じるということは……

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今回は、「負ののれん」について解説したいと思います。

負ののれんとは何か?

中小企業の経営者であるあなたは、「負ののれん」とは何か知っているでしょうか?

負ののれん?

負ののれんとは、前回ののれんの処理に対する2つの考え方!で説明した(正の)のれんと同じように、企業結合(=合併や連結のこと)などを行う際に生じる“貸借差額”のことですが、(正の)のれんが借方に生じるのに対して、負ののれんは貸方に生じるという違いがあります。

ちなみに、(正の)のれんには括弧が付いているのに対し、今回説明する負ののれんには括弧が付いていませんが、これは負ののれんと対比させるために、(正の)という部分をあえて加えているからであり、(正の)のれんは「のれん」というのが正式な名称だからです。

一方、負ののれんについては、「負ののれん」が正式な名称となります。(但し、財務諸表上の勘定科目名としては「負ののれん発生益」がよく使用されています。)

このことは、企業結合(=合併や連結のこと)などを行う際に生じる“貸借差額”は、通常は借方に生じるということを意味し、貸方に生じる負ののれんというのは、かなりイレギュラーなものであることを示唆しています。(両者が同じように生じるのなら、負ののれんと対応させ「正ののれん」が正式な名称になるはずですよね!)

尚、(正の)のれんと同様に、昔は負ののれんという勘定科目は使わず、個別財務諸表は「合併差益」、連結財務諸表は「連結調整勘定」とそれぞれ使い分けていたのですが、現在では、どちらの場合も負ののれんで統一され、同じように使われています。

しかし、(正の)のれんとは違い、負ののれんは国際会計基準(IFRS)などとの調整が行われ、会計基準が変更されているので、現在では、発生した期に特別利益として計上されることになっています。

時価より安く買える?

企業結合などを行う場合、被取得企業や取得する事業の取得原価は、原則として、個々の資産や負債の取引時点の時価を算定し、それらを合算することで求められます。

ですから、“貸借差額”が借方に生じるということは、対価(=売り手に引き渡す現預金や株式の価額のこと)が個々の資産や負債の取引時点の時価を合算したものよりも高いということであり、逆に、“貸借差額”が貸方に生じるということは、対価が個々の資産や負債の取引時点の時価を合算したものよりも安いということです。

”貸借差額”が借方に生じるケースの図と”貸借差額”が貸方に生じるケースの図

つまり、(正の)のれんが生じるということは、被取得企業や取得する事業に対して、買い手が時価より高い価値を見出しているということであり、逆に、負ののれんが生じるということは、買い手が時価より低い価値しか見出していないことを意味します。

そうだとすると、早急に現金化しなければならない事情がある場合などを除き、理屈の上では、廃業してそれぞれの財産を処分した方が売り手は多くの資金を得られることになるので、そのような取引が成立する余地はないように思えます。

けれども、現実には、オンバランスされない債務保証のような債務や将来的なリスクなどを抱えている場合があるため、これらを考慮すると負ののれんが生じる場合があるのです。

いずれにせよ、負ののれんが生じるような取引というのは、被取得企業や取得する事業に何らかの問題がある可能性があるので、買い手の側は「安く買えて良かったね!」と単純に喜ぶわけにはいきません。(会計理論では説明できない様々な思惑が絡んだうえでの決定ということになります!)

もし、中小企業の経営者であるあなたが、企業結合などを行う機会があるとしたら、その点はよく肝に銘じておいた方よいでしょう……

次回は、「保守主義の原則」についてお話ししたいと思います。

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