第二会社方式を採用するという選択をしたなら、次は……(中小企業経営者のための事業再生!その11)

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今回は、「第二会社方式」について考えてみたいと思います。

第二会社方式とは?

第二会社方式とは、見込みのある優良事業を受け皿となる別会社(第二会社)に移し、その後、不良事業を残した既存の会社を清算してしまう手法のことです。

第二会社方式のイメージ

第二会社方式を行うと、中小企業の場合、金融機関が債権放棄(債務免除)してくれることはまずないが……(中小企業経営者のための事業再生!その8)で説明した債権放棄(債務免除)を行うのと実質的に同じ効果が得られることになります。

第二会社方式の2つの方法!

第二会社方式には、大きく分けて「事業譲渡」による方法と「会社分割」による方法の2つがあります。

2つの方法は優良事業と不良事業を切り離してしまうというという点で共通しますが、事業譲渡による方法が“取引上の行為”であるのに対し、会社分割による方法が“組織法上の行為”であることから、受け皿となる別会社(第二会社)への移転の手続きがそれぞれ異なります。

事業譲渡と会社分割 どちらを選択するべきか?

例えば、資産や負債や契約などの移転について、事業譲渡による方法の場合には、個別に譲渡しなければならないので、相手方の同意がいちいち必要なのに対し、会社分割による方法の場合には、包括的に承継されるため、原則として相手方の同意は不要になります。

そのため、事業譲渡による方法の場合には、不良資産や簿外債務を承継するリスクがない代わりに、原則として許認可(=事業を行うことに対する行政の許可や認可のこと)の引き継ぎができません。(但し、特例により一部引き継ぎが可能なケースもあります。)

一方、会社分割による方法の場合には、不良資産や簿外債務を承継するリスクがある代わりに、許認可の引き継ぎが認められるケースが多いです。(但し、全ての事業について許認可の引き継ぎが認められているわけではありません。)

又、税務上の取り扱いについても、事業譲渡による方法の場合には、消費税や不動産取得税が課されるのに対し、会社分割による方法の場合には、消費税の課税対象外取引であって、一定の要件を満たす場合には不動産取得税が課されません。

濫用的会社分割とは?

「濫用的会社分割」とは、分社型分割を行う際に、会社分割後も既存の会社に対して債権が残存する債権者(以下、残存債権者という。)に対しては債権者保護手続きをする必要がないことを利用して、こっそり優良事業を受け皿となる別会社(第二会社)に移し、不良事業のみを残した既存の会社を清算することで、実質的に借金を踏み倒してしまうことをいいます。

確かに、この方法を使えば形式上は上手く債務逃れができるように思えますが、現在では、濫用的会社分割に対する「詐害行為取消権」を認める判例の存在や平成26年の会社法改正により残存債権者に対する請求権が定められたことで、濫用的会社分割による債務逃れは実質的にできなくなっています。

後で訴えられないように事前に残存債権者にも同意を求めましょう!

それに、濫用的会社分割を行ってしまうと、残存債権者である金融機関との信頼関係は崩れてしまいますから、後で資金が必要になった時に協力してもらえなくなり、事業再生はますます難しくなるでしょう……

次回は、「事業の収益性を改善する手続き」についてお話ししたいと思います。

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