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今回は、「債権放棄(債務免除)」について考えてみたいと思います。
債権放棄(債務免除)とは?
債権放棄とは、貸付金の一部あるいは全部について、債務者からの弁済を受ける権利を放棄することであり、債務者の側から見れば、債権者から債務の免除を受けることを意味します。
債務者である企業の側からすれば、債権放棄が行われると財務内容が改善するので、事業再生を行うのにかなり効果的な手段だといえますが、債権者である銀行などの金融機関の側からすれば、本来は約条に従って返済されるべき債権を一方的に失うことになるので、簡単に応じられるものではありません。
![リスケジュールと比べてハードルがかなり高い……](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=426x10000:format=png/path/sd175ba47308b7fa8/image/i4a3a719717c351f5/version/1542094745/%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%A8%E6%AF%94%E3%81%B9%E3%81%A6%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%AB%E3%81%8C%E3%81%8B%E3%81%AA%E3%82%8A%E9%AB%98%E3%81%84.png)
そのため、金融機関が債権放棄を選択するとするなら、融資した資金の一部をたとえ回収できなくなったとしても、企業の再建を支援する方が、結果的に回収できる資金が多くなると見込めるような経済的合理性がある場合だけです。
又、債権放棄が行われると、企業の側では「債務免除益」が生じ、多額の税金の支払いが必要となる場合があるので、債務者である企業の側も必ずしも良いことばかりとは限りません。(但し、この問題については「繰越欠損金」を使うことなどで、一定の範囲で対処することは可能です。)
債権放棄される額はどう算出されるのか?
債権放棄される額の算出方法は、主に、ネットアセット・アプローチによる方法とインカム・アプローチによる方法の2つが考えられます。
ネットアセット・アプローチによる方法とは、企業の実態を反映させた実態貸借対照表を作成することで実質の債務超過額を算定し、これを基に債権放棄額を算出する方法であり、
![ネットアセット・アプローチによる債権放棄額の算出方法](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=520x10000:format=png/path/sd175ba47308b7fa8/image/ifa0e7465ab34ce79/version/1586072402/%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%88-%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%82%B5%E6%A8%A9%E6%94%BE%E6%A3%84%E9%A1%8D%E3%81%AE%E7%AE%97%E5%87%BA%E6%96%B9%E6%B3%95.png)
インカム・アプローチによる方法とは、将来キャッシュフローなどを使って実質的な企業価値を算定し、これと負債額を比較することで債権放棄額を算出する方法です。
![インカム・アプローチによる債権放棄額の算出方法](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=508x10000:format=png/path/sd175ba47308b7fa8/image/id1ac4b75b8265753/version/1586072530/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%A0-%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%82%B5%E6%A8%A9%E6%94%BE%E6%A3%84%E9%A1%8D%E3%81%AE%E7%AE%97%E5%87%BA%E6%96%B9%E6%B3%95.png)
尚、債権放棄される額を決定する際には、別途、株主責任についても問われる可能性があるので、減資と増資を同時に行う場合があります。(当然、この増資はスポンサー企業を見つけて出資してもらうということになりますが……)
複数の金融機関と取引をしていた場合には……
更に、一行取引(=ひとつの金融機関とだけ取引をすること)ではなく、複数の金融機関と取引をしていた場合、総額については上述の方法で算出できるとしても、個々の金融機関ごとに債権放棄額を決める必要があります。
例えば……
・メインバンクとそれ以外の金融機関での取り扱いは平等にするべきなのか?(メイン寄せするべきなのか?)
・債権放棄額は残高プロラタ(=債権残高に応じて比例配分する方法)によるのか?
・債権放棄額は信用プロラタ(=非保全債権残高に応じて比例配分する方法)によるのか?
など、企業と金融機関との話し合いだけでなく、それぞれの金融機関との利害調整も必要となります。
![金融機関の間で利害が対立する……](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=374x10000:format=png/path/sd175ba47308b7fa8/image/i1d3dee126ae37a2b/version/1542095796/%E9%87%91%E8%9E%8D%E6%A9%9F%E9%96%A2%E3%81%AE%E9%96%93%E3%81%A7%E5%88%A9%E5%AE%B3%E3%81%8C%E5%AF%BE%E7%AB%8B%E3%81%99%E3%82%8B.png)
放っておくと、金融機関どうしで他行の出方を探ったり、駆け引きが行われたりして、いつまでも話がまとまらないので、中小企業再生支援協議会などに調整を行ってもらう必要があるでしょう。
次回は、「DDS(デット・デット・スワップ)」についてお話ししたいと思います。
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