多額の役員報酬をもらっていると……

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このブログ記事は、2020年1月13日に改題・更新しました。

今回は、給与所得控除の改正について解説したいと思います。

法人化することのメリット

このブログ記事を読んでいるあなたは会社経営者でしょうか?

もしそうだとすれば、あなたが個人事業者*ではなく、会社経営者になることを選択したのは、会社でなければ取引に応じてもらえないために仕方なく会社を設立したような場合を除けば、法人化した方が税金を安くできると思ったからではないでしょうか?

*個人事業主という用語の方が一般的に使用されていますが、消費税法第2条第1項第3号で事業を行う個人を個人事業者と定義していますので、私のブログ記事では個人事業者という用語で統一しています。

法人化した方が税金が安くなる?

確かに、個人事業者の所得に対しては所得税が課されることになりますが、超過累進税率により課税されることになるため、所得金額が増えると税率も高くなってしまいます。(但し、所得金額全体に高い税率が適用されるのではなく、基準となる所得金額を超えた分に対して高い税率が適用されることになります。)

一方、会社を設立すると、会社の所得に対しては法人税が課されることになりますが、中小法人に軽減税率が一部適用されることを除けば、基本的に税率は一定ですから、個人事業者の所得金額が増えてくれば、法人化した方が税務上は有利ということになります。

「給与所得控除」を受けられるというメリット

法人化することのメリットは、何も税率の違いによるものだけではありません。

その他のメリットとして「給与所得控除」を受けられることがあります。

法人化した場合には、会社経営者は会社から役員報酬をもらうことになりますが、この役員報酬について、所得税法上は給与所得として課税がされます。

よく「サラリーマンは必要経費の計上が所得計算上は認められていないので損だ!」という趣旨の発言をされる方がいるのですが、実際には、サラリーマンの必要経費は「給与所得控除」という形で考慮されています。

サラリーマンの必要経費は「給与所得控除」という形で考慮されています!

しかも、この「給与所得控除」の額は給与収入に応じて高くなり、又、その額は想定される必要経費の額よりも高めに設定されていたので、「給与所得控除」による節税効果はかなり大きかったのです。

けれども、課税の公平性を確保するなどの理由により、長らく黙認されてきた「給与所得控除」が近年立て続けに改正されています。

まず、平成24年度の税制改正において、それまでは「給与所得控除」に上限額はなかったのですが、(給与収入が1,500万円を超える場合)上限額が245万円となり、次いで、平成26年度の税制改正において、「給与所得控除」の上限額が引き下げられ、(給与収入が1,000万円を超える場合)上限額が220万円となりました。

そして、平成30年度の税制改正によって、「給与所得控除」の上限額は更に引き下げられることになり、令和2年分から(給与収入が850万円を超える場合)上限額が195万円となります。

そのため、これまでのように多額の役員報酬をもらっていると増税になってしまう可能性が高く、「どれくらいの報酬額が望ましいのか?」をシミュレーションする必要があるでしょう。

残念ですが、会社の利益を赤字にしてまで、多額の役員報酬をもらう理由はもうありません……

給与等の収入金額と給与所得控除の関係のグラフ

次回は、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しについてお話ししたいと思います。

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