固定費と変動費を上手く分解できないのだとしたら……(管理会計のワナ!その3)

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このブログ記事は、2018年9月9日に改題・更新しました。

今回は、「固定費と変動費の分解」について解説してみたいと思います。

固定費と変動費を分解する方法

前回説明した「CVP分析」「直接原価計算」を行うためには、固定費と変動費の分解を行う(以下、「固変分解」という。)ことが前提となりますが、固変分解をするのは、中小企業の経営者であるあなたが思うほど簡単なことではありません。

固変分解をするのは簡単ではない……

固変分解するには、主に次の5つの方法があります。

1.IE(インダストリアル・エンジニアリング)法

インプットとアウトプットの関係を工学的に測定して、正確な関数を見つけ出す方法であり、科学的な分解法といえます。しかし、かなり限定された範囲でしか適用できず、あまり実用的な方法とはいえません。

2.勘定科目精査法(費目別精査法)

勘定あるいは費目ごとに、固定費か変動費かを決定する方法であり、実務でよく使われます。しかし、決定の仕方が主観的であり、正確性に欠けるという欠点があります。

3.高低点法

過去の実績データから、正常操業圏にある最高操業度時と最低操業度時の2つのデータを選び出し、その2点を結ぶ直線から固定費と変動費を導き出す方法です。簡単に行えますが、正確性に欠けるという欠点があります。

4.スキャッター・グラフ法

過去の実績データをグラフにプロットし、目測で近似直線を引くことで固定費と変動費を導き出す方法です。目測であるため、客観性には欠けます。

スキャッター・グラフ法

5.最小自乗法(回帰分析法)

スキャッター・グラフ法で求めた近似直線を数学的に見つけ出し、それにより固定費と変動費を導き出す方法です。以前は計算が大変でしたが、現在ではExcelを使って簡単に計算を行うことができるため、実用的な方法だといえます。

固変分解が難しい本当の理由……

固変分解が難しいのは、上述の固変分解する方法にそれぞれ問題があるだけでなく、実際の総費用線が直線ではなく、本当は曲線であるという点にあります。

実は、費用の多くは準固定費や準変動費であることもあって、「損益分岐図表」で見られるようなきれいな直線にはならないことが分かっています。

しかし、それだとCVP分析などを行う際に複雑になってしまうため、実務上の便宜(いくら正確に分析ができるとしても、多額のコストがかかるようであれば意味がありません……)を考慮して、正常操業圏内で近似する直線を使って総費用線を表現しています。

そのため、実際の操業度が正常操業圏から乖離すればするほど、実際の数値と分析上の数値が大きく乖離することになり、又、正常操業圏の範囲の取り方などによっては、変動費率が1を超え、固定費がマイナスになってしまうような場合もあります。

曲線の総費用線の問題点

このように、固変分解を上手く行えないような場合には、いくらCVP分析などを行ったとしても、それらの情報は使えないどころか、かえって経営判断を誤らせる原因となってしまいます。

そこで、このような場合には、CVP分析などを行うのを諦めるか、あるいは、現状に適合するように工夫をした上で行う必要があります。

次回は、「固定費中心型の企業」と「変動費中心型の企業」についてお話ししたいと思います。

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