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今回は、「その他の引当金(その1)」について考えてみたいと思います。
引当金に該当するものは貸倒引当金だけでは……
中小企業の経営者であるあなたは、「引当金」と聞いて何をイメージするでしょうか?
おそらく、貸倒引当金の計上に対する会計と税務の考え方の違い!(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その9)や貸倒引当金の計上が税務では認められないとしても……(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その10)で解説した貸倒引当金をイメージしたのではないかと思うのですが、引当金に該当するものは何もそれだけではありません。
その証拠に、『企業会計原則』の注18を見てもらえれば、貸倒引当金以外にも、製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金が例示されているので、会計上、引当金に該当するものは貸倒引当金だけではないことが分かるはずです。
しかも、これらは例示なので、将来の特定の費用又は損失であること、その費用又は損失が当期以前の事象に起因して発生するものであること、発生の可能性が高いこと、その金額を合理的に見積ることができることの4つの要件を満たせば、これらの引当金に該当しない場合であっても、会計上、何かしらの引当金として処理する必要があります。
しかし、このような説明をしたとしても、あなたが経営する会社の社歴がそれほど長くないようだと、「ウチの決算書に貸倒引当金以外の引当金が載っているのを一度も見たことないけどなぁ」と思われたかもしれません。それもそのはず、中小法人等*や銀行、保険会社などが貸倒引当金を計上する場合を除き、税務上は引当金を計上しても損金算入が認められないからです。
*期末資本金の額や出資金の額が1億円以下の法人(資本金の額や出資金の額が5億円以上である法人等による完全支配関係がある子会社等を除く)のこと。
引当金を計上しても損金算入が認められない理由とは?
引当金を計上しても損金算入が認められないのは、引当金の計上は当期以前の事象に起因して必要となる会計処理ではあるものの、その対象となる支出は将来生じるために、確定した情報ではなく、予測に基づいた情報により判断を行わなければならず、そのような事情から恣意的な金額の計上を許してしまう危険性が高いからです。
確かに、「税収の確保」や「課税の公平」という税制の目的を達成するという観点からは、企業側の都合によって所得の額が変化しないよう、できるだけ課税される企業の裁量の余地をなくし、画一的な処理が行われるようにする必要があるので、引当金を計上しても損金算入を認めないという措置には一定の合理性があります。
けれども、企業の経営状態を把握し、これを利害関係者に報告するという会計本来の目的を達成するという観点からは、確定した情報ではなく、予測に基づいた情報により判断を行わなければならなかったとしても、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができるのであれば、それらを計上しなくてもよいという理由にはなりません。
このように、会計と税務では目的が異なることから、引当金に対する対応は大きく変わってくるのです。
次回は、「その他の引当金(その2)」について解説したいと思います。
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