重要な会計方針の選択、よく考えないで行っていると……(中小企業経営者のための決算書入門!その17)

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今回は、「会計方針が決算書にもたらす影響」についてお話ししたいと思います。

会計方針とは何か?

中小企業の経営者であるあなたは、どれくらい「会計方針」を重要だと思っているでしょうか?

どれくらい重要だと思っているでしょうか?

ちなみに、会計方針とは、決算書を作成するにあたって採用された一般に公正妥当と認められる会計処理の原則や手続きのことですが、真実性の原則が要請している真実とは……でも解説したように、企業の実状を最も正しく反映させることができる会計処理の原則や手続きを会計方針として選択する必要があります。

そして、棚卸資産の評価基準及び評価方法などの重要な会計方針については、「個別注記表」に記載することが求められていますが、そのような開示が必要となるのは、そのような数値が算定された背景を知らなければ、決算書を見ても正しい判断ができない恐れがあるからです。

先入先出法と平均法を比較してみると……

例えば、以下のような商品Aの売買取引を行ったものとします。

1月1日(期首):商品Aの期首残高 単価10,000円×100個=100万円

6月30日:商品Aを仕入 単価20,000円×100個=200万円

9月30日:商品Aを売上 単価30,000円×100個=300万円

12月31日(期末):実地棚卸を行い、商品Aが100個あることを確かめた。

当期の仕入単価は前期の2倍になっている……

棚卸資産の払出単価の計算方法として先入先出法を採用していた場合には、「先に仕入れたものから先に出庫する」という仮定によって払出単価を計算することになるので、9月30日の商品Aの払出単価は10,000円となり、当期の商品Aの売上原価は100万円(売上総利益は200万円)、期末残高は200万円となります。

一方、棚卸資産の払出単価の計算方法として平均法(移動平均法*や総平均法*)を採用していた場合には、平均単価により払出単価を計算することになるので、9月30日の商品Aの払出単価は(100万円+200万円)÷200個=15,000円となり、当期の商品Aの売上原価は150万円(売上総利益は150万円)、期末残高は150万円となります。

*この設例の場合には、どちらの方法を選択していたとしても同一の結果となりますが、移動平均法を選択した場合には、単価の異なる棚卸資産を受け入れる度に平均単価を算定する必要があり、総平均法を選択した場合には、一定期間ごとに平均単価を算定する必要があります。

このように、先入先出法と平均法のどちらを選択しているのかによって、それ以外の条件は全く同じであっても、決算書の数値は変わってしまいます。

現在は「後入先出法」を使うことはできません!

もちろん、この設例は先入先出法と平均法の違いを際立たせるために、かなり極端な設定にしていますが、それでも、先入先出法と平均法を比較した場合、棚卸資産の仕入価格が上昇し続けているのであれば、先入先出法の方が平均法よりも棚卸資産の売上原価は小さく計算され(利益は大きく計算され)、棚卸資産の期末残高は高く計算される傾向にあることに変わりはありません。

尚、このように決算書に大きな影響を与える会計方針の選択ですが、なぜ、継続性の原則が必要になるのか?でも解説したように、一度採用した会計方針を自由に変更することは認められておらず、会計方針を変更する場合には、個別注記表において正当な理由を開示する必要があります。

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