総額主義の原則が必要なのはなぜか?(中小企業経営者のための決算書入門!その13)

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今回は、「総額主義の原則」についてお話ししたいと思います。

損益計算書における総額主義の原則とは何か?

中小企業の経営者であるあなたは、売上高が10億円で営業利益が5千万円のA社と売上高が20億円で営業利益が5千万円のB社では、どちらが優秀な会社だと思うでしょうか?(他の条件は考慮外とします!)

どちらが優秀な会社なのか?

もちろん、A社の方ですよね。

なぜなら、営業利益が同じ5千万円であったとしても、A社の売上高が10億円であるのに対し、B社の売上高は20億円ですから、A社の売上高営業利益率(=営業利益÷売上高×100)は5%になり、B社の売上高営業利益率は2.5%になるので、A社の方が収益性が高いことは一目瞭然だからです。

けれども、A社の売上高が10億円というのは総額ではなく、売上高20億円から売上原価10億円を控除した残額のことだとしたらどうでしょうか?

この場合には、A社の実際の売上高は10億円ではなく、20億円だと判断するべきですから、A社の売上高営業利益率も2.5%ということになるはずです。

このように、決算書の利用者が誤解しないようにするには、一部の例外を除き、収益と費用をそれぞれ総額によって損益計算書に記載し、取引規模を明らかにすることが必要になります。

そこで、企業会計原則では、損益計算書原則一Bにおいて「総額主義の原則」を定め、収益と費用を相殺して、その全部または一部を損益計算書から除去することを禁止しています。

貸借対照表における総額主義の原則とは何か?

このような総額主義の要請は、何も損益計算書だけに限った話ではありません。

総額主義の原則は損益計算書だけでなく、貸借対照表でも要請されています!

例えば、あなたは、総資本が20億円で経常利益が3千万円のC社と総資本が25億円で経常利益が3千万円のD社では、どちらが優秀な会社だと思うでしょうか?(他の条件は考慮外とします!)

もちろん、C社の方ですよね。

なぜなら、経常利益が同じ3千万円であったとしても、C社の総資本が20億円であるのに対し、D社の総資本は25億円ですから、C社の総資本経常利益率(=経常利益÷総資本×100)は1.5%になり、D社の総資本経常利益率は1.2%になるので、C社の方が効率性が高いことは一目瞭然だからです。

けれども、C社の総資本が20億円というのは総額ではなく、5億円の資産と負債を相殺した残額のことだとしたらどうでしょうか?

この場合には、C社の実際の総資本は20億円ではなく、25億円だと判断するべきですから、C社の総資本経常利益率も1.2%ということになるはずです。

このように、決算書の利用者が誤解しないようにするためには、貸借対照表においても、資産と負債及び純資産(資本)をそれぞれ総額によって貸借対照表に記載し、財政規模を明らかにすることが必要になります。

そこで、企業会計原則では、貸借対照表原則一Bにおいて「総額主義の原則」を定め、資産と負債及び純資産(資本)を相殺して、その全部または一部を貸借対照表から除去することを禁止しています。

総資本経常利益率の説明図

尚、損益計算書における総額主義の原則が、収益から費用を差し引くという計算過程を全て明らかにすることで決算書の利用者が誤解しないように配慮しているのに対し、貸借対照表における総額主義の原則は、そもそも原理的に差し引き関係にない資産と負債及び純資産(資本)のオフバランス処理を禁止しているという点で異なっています。

次回は、「区分表示の原則」について解説してみたいと思います。

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