正常営業循環基準が先か?1年基準(ワンイヤー・ルール)が先か?(中小企業経営者のための決算書入門!その12)

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今回は、資産や負債の「流動・固定の分類」についてお話ししたいと思います。

「正常営業循環基準」とは何か?「1年基準(ワンイヤー・ルール)」とは何か?

中小企業の経営者であるあなたは、資産や負債の「流動・固定の分類」は全て「1年基準(ワンイヤー・ルール)」だけで行われていると思い込んでいないでしょうか?

どのような基準を使って流動・固定を分類するのか?

実は、資産や負債の「流動・固定の分類」は、まず「正常営業循環基準」を適用して、流動資産や流動負債とされなかった残りの資産や負債が「1年基準(ワンイヤー・ルール)」の対象となるため、資産や負債の「流動・固定の分類」は全て「1年基準(ワンイヤー・ルール)」だけで行われているわけではないのです。

尚、「正常営業循環基準」とは、企業の主目的である通常の営業活動に伴って生じた資産や負債であるかどうかで判断を行う基準のことであり、「1年基準(ワンイヤー・ルール)」とは、決算日の翌日から起算して1年以内に決済される資産や負債であるかどうか、あるいは、決算日の翌日から起算して1年以内に費用や収益になる資産や負債であるかどうかで判断を行う基準のことです。

ちなみに、通常の営業活動とは、「商品を仕入れ(そして、仕入代金を返済し)、商品を販売する(そして、販売代金を回収する)」という活動や「原材料を仕入れ(そして、仕入代金を返済し)、原材料を使って製品を製造し、製品を販売する(そして、販売代金を回収する)」という活動のことを指します。

但し、このような通常の営業活動に伴って生じた資産や負債であっても、いわゆる不良債権や不良在庫に該当するものなどは、通常の営業活動のサイクルから外れることになり、「1年基準(ワンイヤー・ルール)」に従って処理されることになります。

正常営業循環基準と1年基準(ワンイヤー・ルール)の関係

又、建物や機械装置などの固定資産については、残存耐用年数が1年以下になったとしても流動資産とはせず、そのまま固定資産として扱われることになります。

「正常営業循環基準」が「1年基準(ワンイヤー・ルール)」に先行して適用される理由

「正常営業循環基準」が「1年基準(ワンイヤー・ルール)」に先行して適用されるのは、企業の通常の営業活動のサイクルの長さは業種や業態ごとにそれぞれ異なっており、決算日の翌日から起算して1年を超えて決済されたり、あるいは、決算日の翌日から起算して1年を超えて費用や収益になったりする場合も実際にあるので、これらを一律に固定資産や固定負債にしてしまうと企業間比較をする際などに問題が生じるからです。

尚、「正常営業循環基準」により流動資産となるものには、現金預金*、売上債権(受取手形・売掛金)、前渡金(あるいは前払金)、棚卸資産(商品・製品・仕掛品など)があり、「正常営業循環基準」により流動負債となるものには、仕入債務(支払手形・買掛金)、前受金があります。

*預金については、自由に引き落としができるものについては流動資産になりますが、定期預金のように預入期間が定められているものについては「1年基準(ワンイヤー・ルール)」が適用され、決算日の翌日から起算して1年を超えて満期日が到来するものについては固定資産となります。

もし、1年基準(ワンイヤー・ルール)だけで「流動・固定の分類」を行ったら……

そのため、決算書を見る際には、ただ数値だけを追いかけるのではなく、その企業の背景がどうなっているのか(どのような業種や業態に属し、どのようなビジネスモデルで事業を行っているのか等)についても、事前に把握しておかなければなりません。

以上、今回のブログ記事の内容については企業会計原則注解・注16を参照ください。

次回は、「総額主義の原則」について解説してみたいと思います。

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