銀行のROA(総資産利益率)はなぜ低いのか?(地方銀行は大丈夫なのか?その1)

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このブログ記事は、2019年5月6日に改題・更新しました。

今回は、「銀行のビジネスモデル」について考えてみたいと思います。

取引をしている銀行のROA(総資産利益率)を計算してみると……

中小企業の経営者であるあなたは、自分の会社と取引をしている銀行の決算書を見たことがあるでしょうか?

取引をしている銀行が上場していれば、決算書はEDINETや銀行のホームページなどから簡単に入手することができます。

銀行の決算書を入手したなら、ROA(総資産利益率)を計算してみてください。

尚、ROAは当期純利益÷総資産×100で求めることができます。

ROAのイメージ図

ROAを計算したなら、あなたはその値の低さにビックリしたと思います。

銀行のROAが低いのは、日銀の金利政策などにより利ざやが縮小していることも大きな原因の一つですが、それ以外にも、銀行の融資を中心としたビジネスモデルの性質上、どうしても低くならざるを得ないという事情もあります。

融資を中心としたビジネスモデルとは?

あなたもご存じのように、銀行の融資を中心としたビジネスモデルというのは、預金業務により大衆から資金を集め、それを貸付業務により企業や個人に貸付けることで利ざやを稼ぐというものです。

仮に、高利貸しのように貸付金利をとても高くできるのであれば、比較的少ない資金量であっても多額の利益を得ることは可能です。しかし、銀行の場合、その社会的責任の大きさから、貸付金利をそんなに高くすることができません。(法律上も制限があります。)

そこで、銀行はレバレッジ*1をかけて大量の資金を集め、貸出量をできるだけ増やすことでこの問題に対処してきました。

*1テコの原理のこと。この場合は預金業務によって外部から大量の資金を集めることを意味します。

銀行は負債(大衆からの預金)を増やすことで対応してきました!

そのため、必要な総資産の額はどうしても大きくなってしまい、他の事業会社に比べるとROAの値は低くなりがちなのです。

「間接金融」から「直接金融」へ!

ここまでの説明で既にお気づきだと思いますが、銀行の融資を中心としたビジネスモデルを継続していくためには、ある程度の規模の貸出量を確保していくことが必要になります。

けれども、金融ビッグバン以降、日本においても、大企業を中心に主要な資金調達手段が「間接金融*2」から「直接金融*3」へシフトしており、銀行が先ほどの条件をクリアするのは簡単ではありません。

*2(企業などの)最終の借り手が金融機関を介して(家計などの)最終の貸し手から間接的に資金調達すること。

*3(企業などの)最終の借り手が(家計などの)最終の貸し手から直接的に資金調達すること。

更に、地方では人口減少などの要因により地方経済の規模がどんどん縮小してきており、地方銀行がこの条件をクリアするのはとても難しい状態にあります。

そうだとすると、地方銀行をはじめとする多くの銀行が融資を中心としたビジネスモデルそのものを見直すべき時期にきているといえます。(というか、既に、多くの銀行が新たなビジネスモデルを模索しています!)

今後は、決済サービスなどのフィンテックを活用した新しいサービスへ収益の柱が移っていくと思いますが、この分野に参入しているのは銀行だけではないので熾烈な競争になることが予想されます。

新たなビジネスモデルをどうするか……

もし、あなたが銀行から融資を受けているなら、とりあえず、銀行の新サービスの営業攻勢に対する備えをしておいた方が無難かもしれません……

次回は、「低金利がもたらす影響」についてお話ししたいと思います。

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