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今回は、「その他の引当金(その3)」について考えてみたいと思います。
ポイント引当金として処理することが必要だったのは……
前回の損金算入が認められなくても引当金の計上を行うべきか?(中小企業の決算書は経営判断に利用できない!その13)では、税制改正によって損金算入が認められなくなった「賞与引当金」や「退職給与引当金」について解説しましたが、今回は新たな会計基準や適用指針が公表されたことで計上そのものが認められなくなった「ポイント引当金」について解説してみたいと思います。
商品の購入やサービスの利用の都度、自社のポイントが顧客に付与され、次回以降の商品の購入又はサービスの利用時に付与されたポイントを販売価額の割引や商品の交換などに使用できるというポイント制度を導入している場合、顧客に付与されたポイントは使用時に費用として処理すべきだという考え方が以前は一般的でした。
そこで、自社ポイントの未使用残高の内で将来使用されると見込まれる分については、当期以前の販売という事象に起因して将来に費用が生じるのであるから、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができるのであれば、引当金としての計上要件を満たしているので、会計上はポイント引当金として処理することが必要だと判断されていたのです。
新たな会計基準や適用指針が公表されたことで……
しかし、企業会計基準第29号の『収益認識に関する会計基準』や企業会計基準適用指針第30号の『収益認識に関する会計基準の適用指針』が公表されたことで、自社ポイントの付与を伴う販売による対価は、商品やサービスの提供に対する部分と将来に行使することが見込まれる自社ポイントに対する部分の二つから構成されることが明らかにされました。
このように、商品の購入やサービスの利用によって顧客に付与される自社ポイントの会計における取扱いが定められたことにより、現在は販売時に顧客へ付与された自社ポイントの相当額を売上ではなく「契約負債」として処理するものとされ、これまでのように期末時に引当金として処理することはできなくなっています。
注目すべきなのは、『収益認識に関する会計基準』や『収益認識に関する会計基準の適用指針』の公表を受けて、法人税法においても、法人税法で必要な要件をすべて満たしている場合、継続適用することを条件に、販売時に自社ポイントの相当額を収益(益金)とせずに負債として処理することを認めていることです。
そのため、会計で販売時に自社ポイントの相当額を「契約負債」として処理しても、自社ポイントの未使用残高の内で将来使用されると見込まれる分をポイント引当金として処理していた場合と異なり、法人税法で必要な要件をすべて満たし、継続適用しているのなら、法人税申告書を作成する際に調整が不要となります。
但し、法人税法では、原則として10年を経過する日の属する事業年度終了の時においても未行使の自社ポイントの相当額があれば、それらは一括して益金の額に算入しなければならないので、10年を経過しても未行使の自社ポイントの相当額については、会計と税務で取扱いが乖離することになるので注意が必要です。
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