この度は、白石茂義公認会計士事務所のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。
今回は、「親族内承継(その3)」についてお話ししたいと思います。
会社支配権を確保できていない状態だったとしても……
中小企業の経営者であるあなたは、自社の議決権のある株式について「誰が何株持っているのか」をきちんと把握しているでしょうか?
![誰が何株持っているのか?](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=466x10000:format=png/path/sd175ba47308b7fa8/image/i9989dfbcff352df5/version/1706681523/%E8%AA%B0%E3%81%8C%E4%BD%95%E6%A0%AA%E6%8C%81%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B.png)
もしも、あなたが創業者であるなら、あなた自身が議決権のある株式の多くを保有しており、それ以外の議決権のある株式を親族や起業に賛同してくれた親しい友人などが保有しているという状態が最も可能性が高いと思います。
しかし、あなたが二代目や三代目であり、しかも、複数の親族が会社経営に深く関与しているとすれば、議決権のある株式が親族間で分散してしまい、あなたが会社支配権を確保できていない状態だったとしても不思議ではありません。
ちなみに、会社支配権とは、その会社における株主総会の決議を成立させるのに必要な議決権のある株式を一定数以上保有している状態のことを指しますが、株主総会の決議には、決議内容の影響の重要度に応じて普通決議・特別決議・特殊決議があり、それぞれ必要となる定足数(株主総会が成立するに足りる最低限度の株式または株主の割合のこと)や表決数(賛否を決する株式の割合のこと)が異なります。
![株主総会の各種決議の表](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=660x10000:format=png/path/sd175ba47308b7fa8/image/i9fc80d8454ee6e52/version/1706687000/%E6%A0%AA%E4%B8%BB%E7%B7%8F%E4%BC%9A%E3%81%AE%E5%90%84%E7%A8%AE%E6%B1%BA%E8%AD%B0%E3%81%AE%E8%A1%A8.png)
相続権を有する複数の親族が会社経営に深く関与している場合には……
事業承継について書かれた本の多くが述べているように、事業承継をする際には、安定した経営ができることを重視して、後継者に議決権のある株式を集中させるべきなのですが、相続権を有する複数の親族が会社経営に深く関与している場合には、後継者だけに議決権のある株式を集中させるという決断をするのは思うほど簡単なことではありません。
なぜなら、相続権を有する複数の親族が会社経営に深く関与しているにも関わらず、後継者だけに議決権のある株式を集中させて譲渡することは、親族間で著しく不平等な取扱いを行うことを意味しており、それは親族内の融和を乱す原因になるからです。
しかも、後継者に指名された者の経営能力が高くないような場合、後継者だけに議決権のある株式を集中させることは後継者の暴走を許してしまう危険があり、かえって相続権を有する複数の親族間で議決権のある株式を分散させた方がガバナンス(健全な企業統治を行う体制のこと)の観点からは望ましいように思えます。
![それぞれメリット・デメリットがあります!](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=412x10000:format=png/path/sd175ba47308b7fa8/image/i49469a9f6be07acf/version/1706681726/%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%9E%E3%82%8C%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88-%E3%83%87%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99.png)
このように、後継者に安定した経営をさせることを重視するのか、それとも、親族内での融和を重視するのかによって、後継者に議決権のある株式を集中させるべきかどうかの判断は変わってくるのですが、それでも後継者は一人だけに絞るべきです。
というのも、一つの組織に複数の後継者がいると、社外・社内の関係者が困惑する機会を増やし、組織としての一体感が阻害される可能性を高めてしまうからです。
そのため、相続権を有する複数の親族がいたとしても、後継者はその中から一人だけを指名し、他の後継者に指名されなかった親族は補佐役として後継者を支える役割を担当してもらいましょう。
尚、後継者を補佐する気持ちがなかったり、そもそも会社経営に関与する気持ちがなかったりする相続権を有する親族に対しては、会社経営から離れて別の道を進んでもらうのは当然ですが、会社の株式以外に目ぼしい財産がないのであれば、種類株式として議決権がない株式を発行し、これを譲渡するという方法で対応します。
次回は、「親族内承継(その4)」について解説してみたいと思います。
白石茂義公認会計士事務所では、士業コンシェルジュというコンセプトのもと、特に、愛媛県松山市、今治市、新居浜市、西条市の経営者の皆様からのお問い合わせをお待ちしております。
必要の際には、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。