金融検査マニュアルだけが悪いのか?(融資のキホンの応用!その11)

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今回は、金融検査マニュアルの是非についてお話ししたいと思います。

金融監査マニュアル登場前

実は、金融検査マニュアルが登場する前も、銀行は貸付先企業の決算書を評価していました。

けれども、銀行は決算書の評価をあまり重視していませんでした。

なぜなら、中小企業の決算書は、上場企業の決算書とは違って、会計の専門家である公認会計士や監査法人による会計監査を受けておらず、又、税務会計により、実態を正確に表さない会計処理(=税法上ではOKであっても、会計上はおかしな処理)をしているので、融資担当者が決算書を見ても、貸付先企業の実態がよく分からなかったからです。(この状況は今も変わってはいませんが……)

実態がよく分からない……

そのため、貸付先企業とのつき合い(定期預金の積立て度合など)の実績を勘案したり、経営者個人の保有財産の状況を勘案したりするなどして、貸付先企業の評価をしていました。

金融検査マニュアル登場後

ところが、不良債権処理のために金融検査マニュアルが登場すると、金融庁の指導などもあって、銀行は何よりも決算書の評価を重視して融資をするようになりました。

しかし、上述した通り、中小企業の決算書は、上場企業の決算書とは違って、企業実態を正しく反映しているとは限りません。

そこで、銀行はリスクをなるべく低い水準に抑えるため、貸付先企業の決算書を保守的に評価することにし、更に、貸付けた資金が不良債権化した場合に備えて、貸付先企業に担保や信用保証を過度に求めるという形で対応するようになりました。

その結果、誰が見ても「ここは安全だ!」と思えるような財務状態の良い優良企業に低い金利で積極的に融資を行う一方で、財務状態の悪い企業に対しては、自らリスクを取ってまで融資を行わなくなりました。

このやり方だと利ざやが縮小するという問題があります。

金融検査マニュアルの功罪

このように、金融検査マニュアル登場前と登場後を比較すれば、中小企業の経営者であるあなたにも、何が本当の問題であるのかが見えてくるはずです。

それに、金融検査マニュアルが登場する前には、「銀行が何の評価を重視して融資をしているのか?」が融資を受ける側からはよく分かりませんでしたが、金融検査マニュアルが登場した後では、それが“決算書の評価である!”と融資を受ける側からもハッキリと分かるようになり、融資における判断の透明性が増したという点で評価してもよいのではないでしょうか?

そして、決算書の評価を重視し過ぎた銀行の融資の姿勢に問題があることを否定するつもりはありませんが、そもそも、銀行が過度に保守的な行動をしているのは、貸付先企業の実態を正しく把握することができないためですから、決算書の評価以外のものを重視するように変更したとしても、この問題が解決できなければ、現状は大きく変えられないはずです。

貸付先企業の実態を正しく把握できる銀行がどれくらいあるのか……

確かに、一部の銀行では、貸付先企業の事業の将来性を独自の基準で評価するなどの工夫をして、地域経済の発展に尽力しているようですが、これらは、あくまでも例外であると考えるべきでしょう。

そうだとすると、今後も、中小企業の経営者であるあなたの苦悩は続きそうです……

次回は、事業性評価について解説したいと思います。

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