製品1個当たりの限界利益の大きさだけを見ていても……(管理会計のワナ!その6)

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このブログ記事は、2018年9月10日に改題・更新しました。

今回は、「制約がある場合の判断の仕方」について解説してみたいと思います。

共通する制約条件が1つだけのケース

中小企業の経営者であるあなたは、次のような場合、どのような判断をするでしょうか?

どう判断しますか?

<販売数量に制約がある場合>

完全な代替関係にある製品Aと製品Bの市場での需要量が合わせて1,000個までと予測される場合、どのような製品ミックスにすればよいのか?

製品Aの販売単価:2,000円 製品Bの販売単価:2,000円

製品Aの単位当たり変動費:1,000円 製品Bの単位当たり変動費:1,200円

製造・販売が1,000個までの製品Aと製品Bの共通の固定費:500,000円

どうでしょうか?

この場合は、製品1個当たりの限界利益が大きい製品Aだけを1,000個製造・販売すると利益を最大化することができます。

<生産条件に制約がある場合>

年間300時間までしか稼働させられない機械Xを共に使用して生産される製品Cと製品Dがある場合、どのような製品ミックスにすればよいのか?尚、生産した分は全て販売できるものとする。

製品Cの販売単価:10,000円 製品Dの販売単価:10,000円

製品Cの単位当たり変動費:4,000円 製品Dの単位当たり変動費:5,000円

製品Cの単位当たり機械稼働時間:2時間 製品Dの単位当たり機械稼働時間:1時間

どうでしょうか?

この場合は、先ほどのような製品1個当たりの限界利益が大きいものを選択するのではなく、機械稼働時間当たりの限界利益が大きい製品Dだけを300個製造・販売すると利益を最大化することができます。

このように、それぞれの制約条件によって、判断の基準は変わることになります。

それぞれの制約条件によって、判断の基準は変わります!

共通する制約条件が2つ以上あるケース

上述のように、共通する制約条件が1つの場合であれば、制約条件1単位当たりの限界利益が大きいものを優先して製品を製造・販売することで利益を最大化することができます。

あるいは、共通する制約条件が2つ以上あっても、それぞれの制約条件1単位当たりの限界利益の大きさの順番が常に同じであれば、大きいものを優先して製品を製造・販売することで利益を最大化することができます。

しかし、それぞれの制約条件1単位当たりの限界利益の大きさの順番が制約条件ごとに違うような場合には、シンプレックス法と呼ばれる方法を使って、利益を最大化する製品の組み合わせを見つけ出さなければなりません。(ちなみに、制約条件が2つまでなら、数式やグラフを使って、利益を最大化する製品の組み合わせを見つけ出すことは可能です。)

更に、現実の経営では、今回説明したような簡単な制約条件だけでなく、もっと複雑な制約条件のもとで最適な製品ミックスを選択し、製造・販売していかなければならないはずですから、常に製品1個当たりの限界利益の大きさだけを見ていては正しい判断をすることができません。

そのため、部門別管理や予算管理だけが管理会計の役割ではない……(管理会計のワナ!その1)でも説明したように、その時々の状況に応じて、どのような基準で判断するべきなのかをその場でしっかりと考える必要があります。

判断の基準が変われば、結論も大きく変わってくる!

次回は、「全部原価計算VS直接原価計算」についてお話ししたいと思います。

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