税務会計の決算書は、経営判断に利用できない?その7

経営者の皆様、いつも私のブログをご覧いただき、ありがとうございます。

前回は、『財務会計をしているために生じる調整』と『財務会計をしていなくても生じる調整』の分類の具体例について解説しました。

今回は、税務会計の決算書が、経営判断に利用できない理由について解説をします。

一見、税務会計をすれば、会社の財務状況を把握できそうにも見えます。

しかし、それはそう見えるだけです。

何度も例に出していますが、『減価償却』を例にして、税務会計では、会社の財務状況を把握できないことを説明しましょう。

減価償却は、費用配分の原則という考え方により行われます。

減価償却というのは、固定資産は長期に渡って使用され、会社の売上に貢献するものなので、購入時に一度に費用計上するのではなく、それを使用する期間に渡って費用計上するべきであるという考えから行われる手続きのことです。(学問的には、費用配分の原則という考え方になります。)

そうすることで、固定資産を使用することにより獲得される売上と、減価償却費という費用を対応させることが可能となり、その差し引きで求められる利益についても、一定の意味を見出すことが出来るようになります。

そうであるならば、経営判断をする上で、意味を持つ耐用年数は、『経営者が、その固定資産を使用しようと考えている年数』であり、それは経済的耐用年数と呼ばれるものとなります。

しかし、正確な税務計算を行うという目的からは、経済的耐用年数には問題が生じます。

同じ固定資産であっても、経済的耐用年数というのは、それぞれの会社ごとに異なってくるので、会社によって負担させる税金の額が異なってしまうのです。(課税の不公平が生じてしまいます。)

それに、一般に税法が定める法定耐用年数は、経済的耐用年数よりも長いのですが、これは、そうすることで損金計上額を少なくし、税額を大きくしようという考え方が反映されています。(課税の確保をするという考え方です。)

つまり、税務会計は、一般に、財務会計や管理会計よりも、利益が大きくなるよう設計されているのです。

経営者の皆様からすれば、『なんだと!』と思われるかも知れませんが、国家運営のために、国は財源を確保しないといけませんので、これはこれで必要性があるのです。

しかし、何度もいいますが、これらを正当化できるのは、正確な税額計算をするという目的に関してのみです。

つまり、税務会計では、減価償却を行うにあたり、経済的耐用年数ではなく法定耐用年数を使用することを要請するということは、税務会計の目的が、会社の財務状況を把握しようとしているのではなく、正確な税額計算をすることを目的としていることの証拠となります。

経営判断に利用するなら、経済的耐用年数で計算しないと意味がありません。

どうでしょうか?

今回解説した、『減価償却』は、ほんの一例です。

しかし、経営者の皆様には、税務会計には、会社の財務状況を反映させるという目的はないことがご理解いただけたのではないかと思います。

あくまでも、税務会計というのは、財源の確保や、課税の公平性という観点から設計された会計なのです。

ですから、税務会計の決算書は、経営判断に利用できないのです。