差別化戦略なんて、中小企業が出来るのか?その5

追記:続、差別化戦略なんて、中小企業が出来るのか?を書きましたので、こちらも読んでみください。

前回は、ニッチな市場で商売をするというのは、イノベーター(2.5%)とアーリーアダプター(13.5%)という流行に敏感で、移り気な人達を対象にしているので、良いことばかりではなく、彼らを留めるためのコストが発生し、やがては採算がとれなくなってしまうというところまで解説しました。

(もちろん、顧客に飽きられてくる時間は市場によってマチマチでしょうし、中には、市場の特性から、顧客がコアなファンとなり、ずっとその市場に留まるということもあるでしょう。ですから、ここで解説しているのは一般論として・・・という風に思ってください。)


今回は、その対策と問題点について解説したいと思います。

多くの市場では、何年後か、何十年後かは分かりませんが、顧客に飽きられてきて、彼らを留めるためのコスト(広告宣伝費や販売促進費)が増大し、そのままでは採算がとれなくなる時が来ると予想されます。 

そこで、企業として採るべき道は、大きく分けて三つあると思います。

企業が採るべき道は、撤退・転進・前進がある。

一つ目は、『撤退』です。本当に、すごく小さな資本でやっていたならば、元手を回収するのはすぐでしょうから、元手を回収したら、その商売で稼ぐだけ稼いで、あとは潔くやめることもアリだと思います。

『撤退』が出来る企業であるなら、あとは経営者の決断しだいなので、この道を選択するのは、そう難しくはありません。

 

二つ目は、『転進』です。現市場で培ってきた自社の強みを転用できる新市場を見つけ出し、そこに移るのです。

まだ、現市場がダメになる前に新市場を見つけ出した場合などは、自社の強みを基軸にすることで、現市場と新市場とで、シナジー効果(1+1=3になるような効果のこと)を期待することも出来るでしょう。

しかし、中小企業の場合、ヒアリングなどをすると、自社の強みが何であるのかがよく分かっていないケースがあります。その見極めが大切です。

それに、新市場を開拓するにも、それなりの費用が掛かるので、そういう意味での難しさもあります。

 

三つ目は、『前進』です。現市場で対象にしている顧客は、イノベーターとアーリーアダプターだけです。全体の16%の人達にすぎません。アーリーマジョリティ達を取込むことが出来れば、市場はまだまだ発展します。

ですが、『前進』は簡単ではありません。早い段階での競争戦略自体の見直しが必要となるので、難しさの質が異なってくるのです。

これに関連して、ジェフリー・A・ムーアという人が提唱したキャズム理論というのがあるのですが、これによると、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には容易には越えられない溝(キャズム)があるとされます。図にすると以下のようになります。

キャズム理論を示した図

私なりの解釈をすると、キャズムの左側は、差別化集中戦略(ないしは差別化戦略)だけでも対応可能なエリアであり、キャズムの右側は、コスト集中戦略(ないしはコストリーダーシップ戦略)を採り入れないと対応できないエリアです。

つまり、かなり早い段階で、差別化集中戦略(ないしは差別化戦略)からコスト集中戦略(ないしはコストリーダーシップ戦略)に軸足を移し、普及しやすい価格帯(価格競争に勝てる価格)を強く打ち出さなければ、キャズムは越えられないということだと思います。

これは、かなり計画性を持った企業でなければ、選択することは不可能だと思われます。

 

そして、キャズム理論は、キャズムを越えられなければ、その製品は成熟期を迎えられずに消えていくことになるとも唱えており、このことからもニッチな市場は普通の市場に比べて存在する期間が短いことがみて取れます。

次回は、今までの議論を振り返り、企業が差別化をすることの意味について、解説してみたいと思います。