中小企業の決算書は、経営判断に利用できない?その6

その6では、その5の続き、会計に未来情報を取込む際の弊害について、どう取り扱うべきか解説していきます。

まず、復習になりますが、会計に未来情報を取込む際の弊害とは、

  1. 作成者は、神ではなく人間なので、未来のことを完全には予測できない。
  2. 経営者の恣意性(自分の都合の良いように歪めること)が介入する。

というものでした。

 

1.については、完全に予測できないとしても、将来生じる可能性が高いものは、なるべく取込むべきでしょう。

そもそも、株主や債権者(金融機関)、経営者等が、会社の経営状態を判断する上で、有用な情報でなければ作成する意味がありませんし、時の経過によって状況が変わってくれば、タイムリーに修正をすればいいだけのことです。

それよりも、決算書の作成を依頼された者が、このような未来情報を取込んで、決算書を作成することが、能力的に出来ないということの方がずっと深刻な問題です。

将来情報を取込むためには、会計や税務の知識だけでなく、その会社のことや経営に関する知識もなければならない。

2.については、財務会計については、会社外部に提出される情報を作成することになるので、かなり深刻な問題です。最近騒がれた、東芝の不正会計の問題なども、このような情報の取扱いが原因となっているようです。

そのため、上場会社などでは、監査法人(公認会計士)による会計監査が、法律により義務づけられています。(東芝の不正会計の問題で、会計監査制度自体が疑問視されてきていますが、これについては、別の機会があれば説明したいと思っています。)


しかし、中小企業の場合には、外部に提出する決算書について、会計監査を受ける必要もないので、今まで通り、税務会計で作成しても、大きな問題にはならないでしょう。

けれども、決算書を内部で経営状況の判断材料に使う場合などは、これらを今まで通りに税務会計で作成することは止めるべきです。

この場合には、経営者自身が利用する情報を作成するのですから、恣意性など問題になりませんし、これらの情報を、税務会計で作成してしまうと、意味のない情報を作成することになり、経営判断を誤る原因となってしまいます。

経営者の経営状況の判断に利用する情報を、税務会計で作成しても、それらは、経営判断に役立つ情報にはなりません。むしろ、経営判断を誤らせる危険があります。

今まで通り、『税務会計で経営判断に利用する情報を作成するしかない!』というのは、経営判断に会計のデータは利用しないと宣言しているのと変わりません。

もちろん、それならば『うちの会社では、経営判断をするのに会計のデータは使わない!』という方針を採用することも、経営者の自由ですが、それは、メーターや燃料計などが付いていない車で、カンだけを頼りに、高速道路を走るようなものです。

運や度胸任せの経営で乗り切れるほど、いまの経営環境は安定しているでしょうか?大事故を起こすのは時間の問題だと思いますが、どうですか?

経営判断をするのに会計のデータを使いたいと思うのならば、めんどくさがらず、管理会計を熟知し、かつ、経営に関する知識を有する者に、作成のアドバイスを依頼をするのが、賢明な経営者の判断だと思います。